2020 day239

吉祥寺に着いたのは12時前。久しぶりに来た。今年初。去年は来たっけ?歳を重ねるごとに住む場所がどんどん吉祥寺から離れていき、特に子供が生まれてからはすっかり足が遠のいてしまった。

20代の頃、過ごした街。吉祥寺。街並みは当時と少し変わってしまったが、馴染みだった店はいくつかまだ残っている。

ハモニカ横丁にあるスパ吉は、そんな馴染みの店のひとつ。自家製生パスタ専門店。オープンした当時は生パスタがまだ珍しかった気がする。ひとりでも通ったし、女の子を連れてきたこともある。若い頃は、女子とのメシでどこに連れて行くか悩んだものだが、パスタは悩まずに済む数少ないネタだった。名物の極旨ミートソースが自分は好きなのだが、女子はクリーム系のチョイス率が高かったように思う。若い男が食べたいものと若い女が食べたいものは異なるのだ。

スパ吉が8月末で閉店するというニュースを先週たまたま見つけて、これは行かねばと思い立った次第。今朝は家でのんびりしてたものだから、吉祥寺に着いたのは12時前だった。ハモニカ横丁の路地に入りスパ吉の前に到着すると、20人近くの行列ができていた。回転率がいいので、30分も待たずに店内に通された。

注文したのは、定番のミートソース。最後だからと欲張って大盛りで。粉チーズと揚げナスをトッピングに付けた。お馴染みの平打ち生パスタが出てきた。ミートソースをよくかき混ぜてから口に頬張り、昔の記憶を辿る。若かった頃よりも舌が肥えたせいか、初めて食べたときの感動はなく、その代わりに懐かしさを噛みしめた。味を楽しみながら、思い出に浸る感じ。

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食べ終わり厨房のスタッフに挨拶して店を出て、吉祥寺の街を散歩する。この後の用事までまだ時間がある。昔はよく佐野元春ウォークマンで聴きながら歩いていたので、今日もiTunes佐野元春を鳴らし、ぶらぶらした。アンジェリーナ、ハッピーマン、ダウンタウンボーイ……。嗚呼、20代前半の、夢と憂鬱とに絡められたモラトリアム期の気持ちがよみがえる。ジャスミンガール、レインボー・イン・マイ・ソウル……。ひとつひとつのフレーズが心を打つ。

coppice(旧ISETAN)の屋上に行き、一服しながら街と空をぼけーっと眺めていた。広い青空に、大きな雲がぽかりぽかりと浮かんでいる。

変わらない日々を変えたいと願いつつ、このままでいたいという思いも抱えていた宙ぶりんの20代の自分が、この街のどこかで彷徨っていたのだ。

風が吹き、青空に浮かんでいる大きな雲は、少しずつ形を変えながら流れていった。