2019 day23

帰宅途中の電車内。車両の端っこに乗って車掌室を背にボーッと立っていたら、ふと目に入るものが。

車内は空いていて、立っているのは自分一人だが、シートはほとんど乗客で埋まっている。

乗客。

乗客なんだけど、一人だけ、鬼が紛れ込んでいた。初老の眼鏡をかけた鬼が、静かにシートに座っている。几帳面なタイプなのか、手帳を読んでいる。

鬼は嫌いじゃない。そのハゲ頭からニョキッと生えているツノに目を奪われた。

そのうち、初老の鬼は途中の駅で降りていってしまった。あー、いなくなっちゃった。鬼、もう少し見てたかったな。

すると、入れ替わるように今度は悪魔が電車に乗ってきた。コートに隠れて矢印型のシッポは確認できないが、ランクの低い悪魔だ。粘着質な悪戯をする卑屈な悪魔だ。

悪魔がこっちに近づいてきた。悪魔とはあまりお近づきにはなりたくないのに、その卑屈な悪魔は距離を縮めてくる。乗り換えの駅に着いたのでドアの前に立ったら、悪魔が隣に来た。そして一緒に降りた。

鬼ならいいけど悪魔はちょっとね。

卑屈な悪魔、さようなら。足早に乗り換え口へ急いだ。