2019 day90

おぼっちゃまくん』という漫画の茶魔とそのお父さんとのじゃれあいを思い出す。愛情表現としてお互いに舌を出してベロベロする。昔はそれを見て気持ち悪いと思っていた。

しかし、最近2歳の息子がそれをやるようになった。妻に訊くと勝手にやり始めたと言っていたが、それは嘘で、実は妻が仕込んでいたことが後に発覚。こっちが舌をベーッと出すと、息子は「うぇ〜い」と叫びながらベロベロしてくる。気持ち悪い、とはまったく思わない。楽しいので何度も舌を出してしまう。

さっき、妻の手鏡を割ってしまった息子が妻に怒られていた。ヘラヘラしているので、自分も怒った。危ないでしょ!ケガしたらどうするの!と叱った。顔はニヤニヤしながらも、息子の瞳には徐々に涙が浮かんできた。

「パパ」と小さな声でつぶやき、顔を近づけてくる。許して欲しいのだろう。その手には乗らないぞ、ともう一度ダメでしょと言おうとした瞬間、息子がチュッとしてきた。脱力してしまった。もう怒れない。そんなことされたら、パパはもう怒れないよ、茶魔。

2019 day81

有休を取ったけど、朝はいつも通りに起きて洗面所へ行き顔を洗う。ニュースをチラ見しながら花粉症の薬を飲んで寝室に戻る。布団の上でゴロゴロしているうちに妻が目を覚ました。

今日はなんとなく成田山へ行ってみようということになった。気温も上がり天気もいいのでどこか外に出かけたい。自分と息子は成田山に行ったことがなかったし、今日は都心よりもちょっと田舎の空気のほうがよかったので、電車に揺られて成田へ。

着いてすぐソフトクリームとジェラートを食べて、参道を登って行った。この辺は鰻が名産で、鰻屋が数多く立ち並んでいる。昼時を少し過ぎていたが、店の前にはまだ行列ができていた。平日なのにたいしたものだ。

さらに参道を進み、さすがに腹がすいた。妻に鰻を昼食にしようと提案したが、息子がまだ食べられないと難色を示された。とはいっても実は妻も鰻を食べたい。そこで、別の店で息子の腹を先に満たしてしまうことにした。

ちょうどよく、おむすび屋があったので、鮭と焼きおにぎりを頼んだ。できたてのおむすびを店内で息子に食わせた。両親も一口ずつもらう。鮭。うまい。多古米という地産の米を使っているらしい。焼きおにぎりもちょっともらう。こちらはオカカがまぶされている。熱々で、こちらもうまい。素朴なうまさがある。

さて、息子がおむすびを食べ終わったので、おむすび屋を出て本命の鰻屋へ向かった。どの店に入ろうか。店がいくつもあるので迷ってしまう。一番最初に気になっていた店は山門近くの駿河屋。参道を下っていくと、行きに見かけた店前の行列は消えていた。暖簾をくぐるとすぐに席に通された。お子様連れは二階の座敷らしい。

座敷には子連れ家族が二組いた。こうやって席を分けてもらうと、気兼ねなく居られるのでありがたい。息子が多少騒いでも安心だ。

手前の席に座り、厚焼き玉子、ビール、うな重を注文した。先にビールと玉子が運ばれてきた。妻と乾杯をしようとしたら、息子も水の入ったグラスを手に取り重ねてきた。妻が乾杯を仕込んでいたらしい。3人で何度か乾杯してから玉子を食べ始めた。甘さがほどよくぷるんとしている。息子もうまそうに食べている。

そしていよいような重の登場。鰻はいつぶりだろう。半年、一年くらいかなぁ。妻はたぶん三年以上経っているはずだ。

お重にびっちり鰻が寝ている。山椒をかけて、さっそく一口。アツっ、ふくふく、ジュワ〜。うまい。身がふっくらしていて、タレは控えめなので鰻そのものの甘さが口の中に広がる。ひっかかる小骨もないし、身も肉厚で、どんどん箸が進む。息子も妻から一切れもらって、初めはその見た目に怪訝な顔をしていたが、口にするともぐもぐ食べていた。

うまいなぁ。鰻ってうまいなぁ。昨年末くらいから、ずっと鰻が食べたかったのだ。ここの鰻、うまいなぁ。生ビールもうまいし、肝吸いもうまいなぁ。

お重の中がきれいになった。期待以上にうまかった鰻に満足し、たっぷりと満たされた腹をさすりながら箸を置いた。妻もぱくぱく食べて、うな重を完食した。本当は途中でお腹いっぱいになっていたらしいが、どうしても食べたくって最後のほうは無理して食べていたらしい。意地汚い。無理せず残して、あとはこっちにくれればいいのに。別にまだ食べようと思えば食べられたよ、こっちは。

駿河屋を出たあとは、歩きたくなくて抱っこをせがむ息子を抱えながらお参りをして、息子の重さに肩がもげそうだなと思いながら駅に向かった。鰻のパワーで駅までたどり着き、鰻のパワーで電車の中では息子を抱えながらぐっすり眠った。

2019 day79

最近夜寝ていると隣の2歳児に顔面を蹴られることが多い。昨夜も眠りに落ちてまだ間もない時間帯、左頬にバシッといい蹴りが入って目が覚めた。2歳児と侮ることなかれ。本当に痛い。当たったのが目や鼻でなくてよかった。

「いてぇーっ!」と叫び飛び起きて隣を見ると、こっちに足を向けて寝ている息子。布団からはみ出して爆睡している。

壁のほうに向き、ブランケットで頭を隠してもう一度目を瞑った。しかし、一度目が覚めてしまうと、眠いのに寝つけない。そうしてゴロゴロしているうちに何時間経ったのか。時計を見ると2時を過ぎていた。

ダメだ。このままじゃ眠れない。

寝室をそろりと抜け出しリビングに向かった。テーブルの上のグラスにウィスキーをワンフィンガー注ぎ、一気に飲み干す。続けてもう一杯注ぎ、今度はちびちびとやった。付いていないテレビの真っ暗な画面を見つめながら、眠るためのアルコールを身体に入れていった。

よし、これでいいだろう。寝室に戻り床につく。

うーん。

眠れない。

radikoをつけて30分番組を流してみる。これを聴きながら寝よう。寝つけるはずだ。だいたいいつもそうしている。ラジオを聴きながら寝る習慣は小学生の頃からある。

うん。

うーん。

うーーん。

眠れない。

結局寝たのは3時半を回っていたと思う。朝は起きるのがつらかった。そして、朝の通勤電車で一駅寝過ごした。

幼児の寝相の悪さはどうにもならない。夜中の足蹴りには用心しよう。

2019 day77

『運び屋』を観た。90歳のコカイン運び屋をもうすぐ90歳のクリント・イーストウッドが演じてるっていうだけで星1つ取れちゃう映画。派手さ皆無な作品なのに惹きつけられるのは、イーストウッド監督の老練な監督技術によるものか。

仕事と人付き合いを優先して家族を二の次にしてきた代償をこの歳で払わなければならないのはつらい。家族との距離や時間を取り戻そうとする為、気づけば運び屋をやっている90歳のアールなわけだが、鼻歌口ずさみながら長距離ドライブを楽しんでいるところが、なんだか笑えてくる。この人はこうやって47州巡って長年花を届けてきたのだろうな。そしてアールじいさん、カルテルの手下たちとも仲良くなってるし、手下たちもじいさんに一目置いてる風だし、不思議なほっこり感をもたらす。人たらしな人柄がよくわかる。しかしそれもつかの間、カルテル内部の抗争を発端に話は不穏な方向へ。

先週からのピエール瀧の薬物逮捕のニュースと、内田裕也が79歳で亡くなったという今朝のニュースが、頭の中でぐるぐる重なり合って、とにかくアールじいさんを応援したい気持ちになった。意地っ張りで口は悪いが、お人好しでサービス精神旺盛で、憎めないヤンチャさを持ち合わせているアールじいさん。

こういう運び屋のような末端を捕まえても、カルテルの大元を叩けるわけではないので、コカインは蔓延し続け、カルテルは懐を肥やし続ける。意味無いなあ。麻薬戦争映画『ボーダー・ライン』を思い出した。

芸能人の薬物使用者を捕まえて報道で村八分にして出演作品を自主規制して、それに一体なんの意味があるのか。

アールじいさんもピエール瀧も自分の罪を認めてるし、そのツケが自分に回ってくるのも自業自得だとわかっているのだと思う。彼らは結局カルテルのような組織の被害者でしかない。刑務所に送り込むよりも、更生施設なり病院なりに入れたほうがいい。罪を償うべきは他人を貶めた奴だ。あ、でも運び屋は密売に加担したわけだから刑務所じゃないとダメか。後者にしても、二次被害のことを考えると、それはそれで別に審議しなきゃならないのだろうし。

とりあえず長年不義理をした妻の最期を看取れたことが、アールじいさんにとっても奥さんにとってもよかった。ああ、内田裕也樹木希林が重なる。不仲の娘役を演じているのがイーストウッドの実の娘だったりして、これは内田也哉子か。

クリント・イーストウッドの顔や手に深く刻まれた皺もだるんと垂れ下がった上半身の肉も含めて、いろんなご褒美が詰まった映画だった。

2019 day76

『ビール・ストリートの恋人たち』は、アーティスティックな映画だ。劇中、「アーティストという言葉が嫌いだ」というセリフが出てくるが、本作は紛れもなくアーティスティックだ。スクリーンに映し出される色のハーモニーが素晴らしい感動を与えてくれる。光と影、黄色や緑や黒のコントラスト、煙草の煙のダンス、ワンカットワンカットが絵になる。それに衣装がとてもおしゃれ。ティッシュをはじめ、女性陣の衣装が色もデザインも素敵で見入ってしまう。男性陣も、特にティッシュの父親の衣装がよかった。なぜアカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされなかったのだろう?

スパイダーマン:スパイダーバース』はアニメーションの新たなステージ、新しい時代の幕開けを感じさせてくれる作品だった。この衝撃は滅多に出会えるものではない。今この時だからこそ体験できた衝撃だ。近年で言えば、『マッドマックス:怒りのデス・ロード』を観た時と同じような感覚だ。絵柄もモーションも吹き出しも音楽も、キャラクターや設定まで、まあどれもこれも美味しい。アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞したのは当然の出来栄えだ。

そんな素晴らしい映画体験を今週は平日からできたので、普段より幾分か興奮した状態でこの週末に突入した。今日は息子の洋服を買い替える為に、ショッピングモールに行った。さすが日曜のショッピングモール、午前中だというのに人がわんさかいる。

妻と息子を連れ立って子供服の店へ。好きなブランドなので、どれもこれも可愛くて目移りしてしまう。試着OKの店だから息子は完全に着せ替え人形。あれもいいこれもいいと、何着か選んでレジに向かう。会計を済ませ店を出ると隣の店にも目を惹く子供服が。吸い込まれていく両親。2歳の息子は既に退屈気味。またまたシャツやズボンを買い足す。

さらに、そのあとユニクロにも行って部屋着を何着か買って、あーけっこうお金を遣ってしまった。もう疲れたし帰ろうか。と、外に出て、そう言えば自転車を見たいと妻が言っていたのを思い出し、3人で自転車屋さんに向かう。息子がすかさずストライダーを見つけて走り寄っていった。誰も教えてもいないのに、ハンドルを握ってうまく跨った。そして店内をストライダーでゆるゆると進み始めた。ハンドルを曲げればカーブを描けることを知らないので、コーナーに差し掛かると突き当たりにぶつかってしまう。こうやるんだよと教えてやると、次からは曲がれるようになった。

妻がママチャリを見に行っている間も、息子はずっとストライダーに乗っていた。引き剥がそうとしても離れない。仕方ない。いずれ買い与えようと思っていたものだ。そんなに気に入ったのなら買おうかな。

ヘルメットを選んでお会計。げっ、意外と高い。今日はだいぶ散財したぞ。懐は痛んだが、気持ちは充足した。帰ったら家の前でストライダーを教えてあげよう。それから新しい洋服で着せ替えして遊ぼう。

妻の、私にも買ってよ、と言う声は、今のところ聞こえないふりをしている。ちょっと今月は、もうムリ。

2019 day71

今朝は本社近くの別部署で用事を済ませてから職場に向かった。自宅からの所要時間やスタート時間が若干違うので、こういう日はいつもより少しだけ寝坊していられるから嬉しい。

午前中に用事を済ませ、12時前には職場の最寄駅に着いた。早めの昼食を取ろうと、駅近の蕎麦屋に入った。ここは、以前からたまに食べに来るところで、系列の別店舗のほうは某有名お笑いタレントが好んで通っていたとラジオで言っていた。そちらの店は数年前に閉店して、今はここ1店舗のみで営業している。

いつものように蕎麦と丼物のセットを注文した。丼物は4種類あって、今日は牛丼を選んだ。

立ち食いでもないのに、注文すると必ず5分以内に出てくるのが不思議なのだが、今日も今日とて速攻で牛丼とせいろのセットが運ばれてきた。更科を店名に用いているくらいだから、さすがに作り置きではないだろうし、食べた感じも作り置き感はない。ただ、ここの蕎麦はとても細く、ぱっと見そうめんなので、茹で時間は1分くらいなのかもしれない。

せいろは小さなザルが2段になっている。さっそく白く細いせいろに箸を伸ばしすくい上げると、あらあら、1枚目のザルが空っぽに。

え?そんなことあるか?

まさか早食い選手権じゃあるまいし、一口分すくっただけなのに。首を傾げながらとりあえず汁につけて口に運んだ。それから牛丼をパクリ。いつもの味付けだ。

あれ?上に乗っかっている牛肉が半分消えた。あれれ?白飯に対してこの牛肉の量は?しらたきでごまかしている?

先ほどとは反対側に首を傾げて、せいろの2段目に手をつけた。またしても一瞬で空になるザル。仕方ないので牛丼に箸を進めるのだが、こちらはこちらで牛肉と白飯の配分が難しい。左右交互に首を傾げながら、丼を空けて、最後は蕎麦湯で口の中を洗い流した。

一応腹は満たされたのだが、どうもしっくりこない。

伝票を持ってレジへ行く。値段は以前と変わらなかった。

あれぇ?

量を減らして値段を下げたわけでなく、量を減らして質を上げたわけでなく。量が減った。その事実のみ。

記憶違いかな。

腑に落ちないまま財布をしまって店を後にした。仕事しよう。

2019 day65

昨晩、ネットサーフィンをしていたら、素晴らしい音楽に出会った。

Fanny、ガールズバンドの先駆けと言われているらしい。1969年から1975年まで、アメリカのロックシーンで活動していた4ピースバンドだ。自分たちで曲を作り、自分たちで演奏し、メンバー全員が歌うというそのスタイルは、The Beatlesを連想させた。(実際、彼女らのプロデューサーはThe Beatlesを意識していたらしい。)

Fannyの奏でる音色、楽曲構成、歌、ルックス、そのすべてが魅力的で、一瞬でファンになった。身体の芯まで痺れるような衝撃的な出会いはいつ以来だろう。

ざっと調べたところ、オリジナルアルバムは廃盤、iTunesには『Mother's Pride』の1枚のみが販売・配信されていた。あとはYouTubeで楽しむだけだ。

2018年に、ジーン(ベース)、ジューン(ギター)、ブリー(ドラムス ※Fannyデビュー前及びFanny解散直前のメンバー)の3人が集まってリユニオンしているようで、YouTubeに映像が上がっている。皆それなりに年を取って体型も変わっていたが、ヒッピーな出で立ちは健在で、レジェンド感が半端ない。

でもやっぱり現役当時のFanny(ジーン、ジューン、ニッキー、アリス)が最高。The Beatlesの“Hey, Bulldog”のカバーはカッコ良すぎて頭がクラクラしてくる。この楽曲自体、The Beatlesの中でもヘビーな部類に入るが、さらにボルテージを上げてめちゃめちゃロックしている。オリジナル曲もゴキゲンなチューンがめじろ押し。“Special Care”が特にお気に入り。YouTubeを何度もリピート再生した。

そんなわけで、気持ちはすっかり、毎日部屋でギターをかき鳴らし夜はイヤホンでアメリカ・イギリス・日本のロックを聴きながらギターを抱えて寝ていたロック少年だったあの頃に戻ってしまい、昨晩は布団の中でずっとYouTubeにかじりついていて、気づいたら寝落ちしていた。

歴史に埋もれてしまったのがもったいなさすぎる。Fanny!このネーミングもかなり攻めていて、もうすっかり虜なので、音源・映像の再発求む。とりあえず今はiTunes、それからYouTubeをリピートリピートだ。

ネットの時代は当たり前のようにこのような発掘、出会い、学びの機会を与えてくれるのだから、素晴らしい。この体験はつまりタイムマシーンなわけだ。

https://m.youtube.com/watch?v=Zcb1HpH42N8