2019 day338-2

怒り、ふたつめ。

ひとつめは家庭の話で、ふたつめは仕事の話。

客先との契約内容が変わってから、今期の第1Qは低採算の状態が続いた。当然だ。見積の時点でわかっていたことだが、採算の取れない構造なのだ。明らかに取りっぱぐれになっている売上がある。会社の求める利益を出そうと思ったら、客先に求められる業務品質など担保できない。あちらを立てればこちらが立たず。

それでも下期のセレクションに向けて、業務実績重視で運営することを会社に説明し了解を得た。取りっぱぐれの部分は客先と交渉を繰り返し、ようやく要望の一部は通すことができた。それでなんとか赤字だけは出さずに繋いだ第1Qだった。

7月に入り、下期の業務継続が知らされた。これにより、会社からは収支改善の命令が下った。まず、根幹となる業務の運営方法をドラスティックに変えた。業務実績が落ちるのではないかと方々から不安の声が上がったが、結果として実績の落ち幅は少なく、原価圧縮に成功した。収支は見られる数字まで回復した。

しかし、それでも原価が重い。

同時期に、他の複数の事業所で人員補充が必要との報せが入った。自分含め、事業所の責任者たちが本社に集められ、会議が開かれた。

自分の作成した下期の見積では、会社の予算達成ラインには遠く及ばない。予算に達しない業務は整理対象となる。事業所が無くなることだけは避けなければならない。

一方、他の事業所では人材を求めている。

上司から、人を出すよう指示が下った。予算達成ラインに届く範囲まで人を削ることが、第2Qの最後に自分に課せられた使命となった。

このあたりのことは、以前にブログに記した。とにかく身を削る思いだった。当然職場ではハレーションが起きた。もちろん、業務量の減り幅に合わせて人員削減案を描いたのだが、組織の仕組みを変える前に人を減らしたので、単純に仕事がきつくなった。会社は事あるごとに働きかた改革という言葉だけ持ち出し、何をしてくれるわけでもないのに残業削減を吠え続けた。残業の多い自分の事業所は以前から目をつけられていたので、相当たたかれた。しかし、部下にはそのままストレートに落とすわけにはいかない。ただでさえ人員削減でハレーションが起きているのだ。会社と現場との調整に苦労する日々。

ハレーションは今も続いている。想定以上に辞めていく人間も出た。残ったメンバーだけが報われない不健全な運営体制になった。

ほんの一年前までは、エリア内で売上・粗利ともに長年トップの業績を誇っていたが、今や規模は二番手、しかも一位に大きく差をつけられての二番手、そして収支面では完全にお荷物となってしまった。

それでもみんな苦しみながらきりきり舞いで仕事をしてくれている。個々のパフォーマンスがこちらの求めるレベルかといえば決してそうではなく、まだやれることはあるだろうとは思うのだが、今のこの状況下で、不満や愚痴や悪態をつきながらも、必死に試行錯誤してやってくれているだけで感謝したい。

しかしいよいよ限界が近づいていることもわかっていた。自分自身も既に限界は超えている。部下の仕事も巻き取り、複数の客先を相手に日次・週次・月次の定例会に臨み、管理業務もこなしながら、その他の社内外の打ち合わせやら資料作りやらプレゼンやら何やら。業務メールをチェックするのが半日遅れになり、ひどいときは1日遅れになることも。

そして、この日。部下のひとりが、自分を飛び越えて自分の上司に、このままじゃ崩壊すると訴えた。彼は、仕事のパフォーマンスはある部分では突出していて頼り甲斐はあるが、ネガティブな思考と発言に傾きやすい性格でもあった。その点において、彼が彼の役職に求められる役割は全うできていないというのが、特にこの一年の彼に対する評価だった。

年内にまた人が辞める、と彼は上司に言った。このままでは3月までもたない、芋づる式に他にも辞める人が出てきてしまう。業務負荷を減らすために、新しく人を雇わないんですか?

上司も、この事業所のメンバーが、体力的にも精神的にも疲弊していることは知っていた。だから感情が動いた。

上司が自分に言った。

「人を入れてほしい。いや、入れよう。入れていいよ。会社は俺が説得する」

ありがとうございますと言うべきだったのだろうか?

否、自分はその言葉に怒りしか感じなかった。じゃあこの3ヶ月、苦しんできたのはなんだったのだろうか?運営のありかたを変える。もっともっとドラスティックな方法を考える。でも、今は誰も考える余裕すらない。だから今は採算度外視で人を充足させ、余裕を持たせた状態で方法を探ろう。それからまた原価を抑えていけばいい。

その考え方は理解できる。だったら、始めから、あの9月にハレーション覚悟で人を減らしたのはなんだったのか?チーム編成を変え、動きかたも変える、人を減らしてそういうプランを作りここまでやってきた苦労は、なんだったのか?順番が逆ではないか?人を減らすのはもう少し先ではダメなのかというのは、始めから訴えていたことだ。

自分に語りかける上司のほうを向くことができなかった。顔を見たら大声で怒鳴ってしまいそうだったからだ。

もう定時を回っていたし、帰って妻の話を聞いてやらねばならないので、早く帰りたかった。

「検討します」とだけ言い、そのまま退社した。

 

帰宅し、妻の話の続きを聞いた。例の女医の対応のことで、また激しく腹が立った。仕事のことでも怒りは収まっていなかった。

この怒りを今すぐどこかにぶつけたい。

そしてこの記事を書いている。

本当はもっと楽しいことを書きたいものだ。この話はこれでおしまい。