2019 day143

昨日は有休を取って、午前中は3歳の息子の幼稚園のプレへ。いつも前を通るだけだった幼稚園に初潜入。前の日が大雨だったので振替で来た人たちも多かったようで、クラスの中は20組くらいの親子がわらわら。

隣のクラスは年長さんたちがピアノの伴奏に合わせてグリーングリーンを歌っている。息子と廊下を歩いているときに窓から覗いたら、ピアノを弾いているおねえさん先生が見えた。

いた!あの子だ!

ショートボブの彼女は、朝、通勤時にたまにすれ違う人で、いつも可愛いなと思っていた。と同時に、朝早い時間に駅のほうからこの住宅街に向かってくるなんて、いったい何の仕事をしてる人だろうと不思議でもあった。夜勤で帰宅がこの時間?夜の仕事?お水系?そんなふうには見えないけど。

ある日、幼稚園の前で彼女とすれ違った。どちらの方向に歩いていくのか気になったので、そろりと振り返り、後ろ姿を見守った(我ながら気持ち悪い)。すると彼女はそのまま幼稚園の門を開いて中に入っていったのだ。

そうか、幼稚園の先生か!納得!あの子が夜の仕事なわけない!いいなぁ、幼稚園……。

と、また気持ち悪い感想を抱きながら安堵したものだ。

で、昨日初めて幼稚園に行ってみると、息子のクラスの隣でピアノの伴奏をしている彼女を見つけて、テンションが上がった次第。

それはさておき。

息子のクラスは3歳児が通うプレなので、1時間しかやらない。最初の時間はフリータイム。みんな勝手に遊んでる。お片づけのあとは4月5月生まれの子たちの誕生会が開かれた。3歳児はじっとしていられないので、保護者も付き添い前に並ぶ。息子も5月生まれ。妻がパパ行ってあげてと言うので、息子と一緒に前に出た。先生が一人ずつにマイクを向けて、自己紹介をさせた。一人目の子はフルネームを言えた。次、うちの子。口元に当てられたマイクを軽くニヤつきながらじっと見ている。何かを言わなくちゃいけないんだろうな、と思っているのだろうか。それとも、何をしたらいいんだろうか、と困っているのだろうか。数秒、沈黙が続いた。

うちの子は喋れない。声は出すが、有意味語はほとんど出てこない。もちろん、自分の名前なんて言えない。それをわかっていて、敢えて隣で彼のことを見守った。2秒、3秒、4秒。もう耐えられない。息子の代わりに名前を答えた。みんなが拍手してくれる。

次の子も、その次の子も、ほとんどの子が自分の名前を言えた。発音が不明瞭だったり、下の名前だけだったりの子もいたが、ほとんどの子が言えた。

うちの子は自分の名前が言えない。名前を言うという指示さえ理解できていないだろう。

男の子は女の子に比べて発育がゆっくりだというのが一般的な話としてある。自分も言葉を発するのは遅かったそうだ。

息子にとって、言葉の遅れは一つのきっかけに過ぎない。市の発達支援センターに通わせ、発達検査を受け、その結果を医者に見せに行った。医者からは中等度の発達遅滞と診断された。それが昨年のこと。

今年に入って、セカンドオピニオンを求めて、都内の大きな病院へ行った。昨日はその検査結果を教えてもらう日だった。幼稚園のあと、家族3人で病院へ向かった。

担当の男性医師はとてもわかりやすく検査結果を説明してくれた。息子の得意なこと、不得意なこと。総合的に判断して、中等度の自閉症と言われた。

妻はある程度心の準備はできていたらしいが、それでもやはりショックだったようだ。

自分はその分野のリテラシーがあるので、妻とは違う捉え方をしたが、そりゃあ、いろいろ考えるよ。悩むというより考える。

その帰り道。夕方ラッシュが始まる時間帯。電車は混んでいたが、寝てしまった息子を抱っこしていた自分に優先席を譲ってくれた優しい女性がいた。遠慮なく座らせてもらう。そのうち隣の席が空いたので、妻が座った。が、すぐに70代か80代くらいの白髪のお婆さんが乗ってきたので、妻が席を譲った。妻は優しいな。当たり前のことだけど、優しい人柄だな、と思う。

目の前に立った妻と、iPhoneの写真を見ながら談笑していると、隣のお婆さんが何か言ってきた。

「オフ席ですよ」

初めは何を言っているのかわからなかったが、どうやら優先席付近は携帯電源オフということを注意しているらしい。いまどき、そんな根拠のない話に従う人も信じてる人もいないよ、と思ったが、「そうですよね」と言ってiPhoneのカバーを閉じた。

しかし、お婆さんは追撃してくる。「ダメですよ。特に子供の前ではね」と膝の上に抱えている息子を指さし言われた。言いたいことはいろいろあったが、黙っておとなしくしていた。

次の駅に着き、向かい側の優先席が一つ空いた。すると、お婆さんはすかさずそちらに席を移っていった。

自分と妻は顔を見合わせてキョトン。

妻曰く、お婆さんの右隣(自分は左隣だった)の人も携帯を見ていて、それが嫌だったんじゃないかと。はあ、なるほど。徹底してるんだなぁ。

半ば呆れて、ふとお婆さんのほうを見ると、前に立った若い男性にスマホをしまうよう注意していた。

「オフ席ですよ」

彼はその場から立ち去った。

その後もお婆さんは隣の女性にも注意して、さらに新たに前に立った中年男性にも窓に貼ってある掲示物を指さしながら「オフ席ですよ」と注意していた。

お婆さんには背中を向けて立つ格好の妻に逐一実況してあげると、妻は「あれはパトロールだね」と言った。

お婆さんは、とある駅に近づくと立ち上がりドアに向かって進み始めた。夕方ラッシュの満員電車。お婆さんの前には他の人たちが立っている。

お婆さんは目の前に立っている男性に、「あなた、降りるんですか?」と尋ねた。男性は怪訝そうな顔で「はい」と答え、お婆さんは満足そうに頷いた。駅に着きドアが開くと、その男性とお婆さんは他の人たちと一緒に降りていった。

「あれ、最後のどういうこと?」

妻が訊いた。

「つまり、降りないんだったらそこをどきなさいってことでしょ」

「そういうことかぁ!すごいね……」

昼寝から目覚めた息子が猛烈にぐずり出し、途中下車を余儀なくされながらも、なんとか地元の駅に着いたのが19時近く。

もうなんかいろいろあったし疲れたから、焼肉でも食べて帰るか、と最近お気に入りの焼肉屋で腹いっぱい食べて帰宅した。

日が明けて、今日も夏日。

昼間、自拠点から本社へ行く用事があり、その行き帰りは暑かった。歩いて汗をかいたのは今年初だなぁ、なんて思いながら夕方も仕事した。