残穢ー住んではいけない部屋ー

ホラーというよりはミステリー色のほうが強い映画。不思議な現象の謎を解くために、その土地の歴史を遡って調べていく。そして、徐々に明かされていく過去の人々の怨念が、実は様々な背景をもとに絡み合っていったということがわかる。

わっ!と驚かすわけでもなく、かと言ってじめっとした恨み節が前に出てくることもなく、我々の住むこの土地には、過去の住人たちのいろんな人生が染み込んでいるということを教えてくれる。その人がどんな人生を歩んだのか、その土地にどんな事件や事故があったのか、時代を経て紡がれた数多の人生の縮図が、穢れとして現代に残されている。穢れに触れることは、その怨念を背負い込むことにつながる。興味本位で首を突っ込むなよ、そんなメッセージを受けた気がした。

「私」こと主人公のホラー小説家がオカルトには懐疑的という設定が良い。彼女の一歩引いた視点から捉えるクールな反応が、作品内で起きる奇妙な現象を引き立てているし、本作の謎解き要素を強めてもいる。

また、準主役の大学生「久保さん」が建築学科というのも、話の推進力を保つのに説得力があった。寝室から聴こえてくる畳を掃くような音に気味悪がるものの、すぐにはその部屋を引き払わずに住み続ける彼女の肝っ玉には驚いた。きっと現実主義者なのだろうな。音が出なくなる法則を見つけてみたり、近所の人に昔ここで何があったのか聞き込みをしてみたり、案外冷静に暮らしている。しかし、その音のもとが何であるかを解明してしまうと、気味が悪いを通り越し気持ちが悪くなる。さらに前の住人の末路を考えてみれば、さすがに引っ越さずにいられない。

似たような別々の話を辿ってみると、一つの話につながる。ちょっとずつ似ている話はすべて大もとが一緒。これがほんとのヤバイ話。触れちゃいけない穢れがそこにある。普段の生活に溶け込んでいそうなこういう話こそ、じわじわと恐怖がこみ上げてきて好きだ。

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