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Re:さらば あぶない刑事 ※ネタバレあり

どうしてももう一度スクリーンで観たくて、過日、再度映画館へ。タカとユージの勇姿をこの目にしっかりと焼き付けに行った。

一度鑑賞済みということと、公開当初よりは冷静なモードになっているということもあって、前回は目をつむっていた映画としてのアラやムリが、とても目立って感じた。

本作は、あぶない刑事の現役にどうピリオドを打つかということがテーマとなっている。悪を憎み権力に逆らい、派手なことばかりやらかしてきた港署の問題児が、いつしかレジェンドと呼ばれるようになった。しかし老いてなおテンションを高く保ち続け、刑事生活の最後も自分たちなりのケリをつけるつもりでいる。そんなタカとユージの姿を描いたハードボイルド・アクション映画だ。

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定年退職までのタイムリミットはあと5日。タカとユージのスタンスは最後の最後まであぶない刑事でいること。逆に透達は、無事にふたりを定年退職させたい。この二つの対立軸がストーリーの肝となる。

プロットは、大まかに以下の10個に分かれる。

さらばのプロット①
ステップを踏みながら留置所を訪れたユージ。鉄格子の奥にはタカが。「タカ」「ユージ。遅かったじゃないか」

さらばのプロット②
銀星会の残党である闘竜会の伊能をパクることを現役生活最後の仕事と決めたタカとユージ。伊能の開くブラックマーケットに潜入しこれを叩こうとするも、思わぬ伏兵に返り討ちにあう。

さらばのプロット③
闘竜会を潰して代わりに横浜を牛耳ろうと現れた過激犯罪組織BOB。ユージは以前更生させた青年・川澄を救うため、タカは恋人・夏海の過去の因縁もあり、BOBとの対決に発展。

さらばのプロット④
夏海が捕らわれ、そして殺される。

さらばのプロット⑤
夏海の死に打ちひしがれるタカ。独りでBOBのアジトに乗り込むユージ。心配しつつもユージを応援する透。「そんなのタカさんらしくない!」とタカを叱咤する薫。

さらばのプロット⑥
傷を負い、敵に囲まれ絶体絶命のユージ。そこへ颯爽と現れる白馬の王子様ならぬ単車のあぶない刑事ことタカ。伝説のコンビが復活。

さらばのプロット⑦
タカと吉川晃司の単騎決戦。ユージの援護もありタカに軍配。でもなんだかんだでこの日二発目を撃たれちゃうユージ。

さらばのプロット⑧
何十人もの暴力団構成員たちに追い込まれ、今度こそ絶体絶命のタカとユージ。「おまえの夢って何だよ?」「子供を作って、ダンディな刑事に育て上げる」「ユージ、おまえと出会えてよかったよ」「俺こそ最高のデカ人生だった」この一連の泣かせる会話が本作のクライマックス。残りの弾の数と敵の数が合わないのに真正面から突っ込んでいくタカとユージ。

さらばのプロット⑨
横浜港で、ハマの平和のために倒れていった者たちへ黙祷を捧げる透と港署関係者たち。

さらばのプロット⑩
ニュージーランドのオークランドでゴルフを楽しむタカとユージ。無事に死地をくぐり抜けたふたりは、一緒にニュージーランドへ渡り、探偵事務所を設立していた。結婚詐欺に遭った薫がふたりを訪ねてきて、逃げろ〜。

エンドロール。このエンドロールは、往年のあぶない刑事ファンにはたまらない作りになっている。

さて、気になっシーンの数々だが……。

まず、ユージが川沿いを走るシーン。初回の鑑賞時には気付かなかった発見を今回してしまった。身のこなしは軽やかではあるものの、その走りっぷりには以前の疾走感が失われていた。齢60を過ぎているわけだから、当然と言えば当然か……といくばくかの寂しさに浸った次の瞬間、我が目を疑った。そして、気付いてしまった。走るシーンはおよそ7〜8カットに分けられていたが、そのうちの2カットくらい、柴田恭兵ではない別人(ダブル)が走っていたのだ。そりゃ、昔からレパードのドリフト走行は柴田恭兵ではなくスタントだったし、舘ひろしだって両手放し以外のアクロバティックなバイク操縦はスタントがやっていた。それは理解できる。残念とも思わない。でも、走るのは!ユージのランニングショットだけは、柴田恭兵がやらなきゃでしょ!!

以下、人物ごとに。

薫にとっては行かず後家の先輩
松村会長こと木の実ナナは、もうセリフを覚えることができない。中さんのラーメン屋台でのシーンは、完全にカンペを読んでいた。相手(舘、柴田)との間合いもずれている。舞台の袖からプロンプターにセリフを教えてもらっている新劇の老年俳優みたいな芝居だった。

二代目課長
小林稔侍も、もう隠居老人にしか見えなくなっている。タカとユージが定年するのに、なぜこの人はいまだに現役で県警本部長なんかやっているのだろう?

4ヶ国語を操る日系人
吉川晃司は、敵役としていい人選だったと思う。顔も体つきも、舘&柴田コンビと張っても引けを取らない迫力がある。蹴りもいいし。似非カンフーみたいなのはどこまで本気なんだか不思議だったが。あと、まぶたの黒いアイラインは必要だったのか不明。

もう一人のレジェンド
薫。痛々しさの限界を超えた。浅野温子のコメディエンヌっぷりが最大限に発揮されている。もうセリフが支離滅裂で、「小麦粉塗ってるから大丈夫」とか意味わからない。本人も自分でわけのわからないアドリブを入れているのは自覚しているらしいが。キツイと感じるギリギリのラインで、可愛らしいし面白い。敵にマシンガンで襲われたあとの「なんで私を撃たない!惚れたわね?」はこの人にしかできない。本作の見せ場の一つだ。

謎キャラ夏海
夏海こと菜々緒。このキャラ必要か?とは妻が言ったセリフ。タカの悲しみを引き出すには必要なキャラだが、そもそもタカにこんな悲しみをもたらす必要性があったのか、そしてそれは結果的にタカの老いを観客に感じさせてはいまいか?いや、それが目的だったならいいが。老後を楽しみにしているタカと、そんなタカと離れるのが寂しいユージ、というふたりの老い方の違いを見せたのは、なんかリアルだなぁと感じた。夏海というキャラのお陰で、悲しみに暮れるタカを見守るユージの姿にグッときたのは、本作の大きなポイントではあると思う。

頼りになる町田課長
透は唯一まともな人。今や一番安心して見ていられる。それは透というキャラの成長でもあり、俳優仲村トオル自身の成長の影響でもあると思う。透はとても素敵な大人になった。

あぶないオジサン、ユージ
冒頭からノリノリでステップを踏んだり、ブラックマーケットに車で突っ込む時「オラオラオラー!」と叫んだり、レパードを運転しながらリズムに乗って「ハッ!ハッ!」と気合を入れたり、とにかく終始テンションが高い。若い頃のテンションを保ったままのオジサンがいかにアブナイかということがよくわかる。

老いたタカ
声がかすれ気味で、少し渡哲也を彷彿とさせた。老けた声になっていた。そこらへんは経年変化ということで受け止める。しかし、タカは肉体面だけでなく精神面も衰えていた。怒りを爆発させることは幾度もあったが、悲しみの感情を露わにすることはこれまでのタカからは想像すらできない。夏海を抱きかかえて嗚咽するタカの姿に、定年退職を間近に控えた初老の男の悲しみを見た。



と振り返ってみて思ったのだが、最後は映画ではなくテレビドラマに戻ってもよかったのではないか?『あぶない刑事』はテレビサイズが一番合うと思うのだが。だって、これまでの劇場版のどれよりも、テレビシリーズを観返していたほうが面白いのだ。原点であるテレビシリーズで完結してもらいたかった、というのは贅沢な願いだろうか。