さらば あぶない刑事 ※ネタバレあり

ドラマ放送開始から30周年にして完結編。公開初日の昨夜、タカとユージの勇姿を拝みに映画館へ。席に座り、本編が始まるまでの間、高揚感と緊張感が入り混じった変な気分に陥り、落ち着かなかった。妻が買ってきたポップコーンにひたすら手を伸ばす。

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ユージがステップを踏みながら留置所の廊下を歩いてくる。「タカ」「ユージ」声を掛け合うふたり。ファンならここでウルっとくる。

「近藤課長だったらなぁ……」タカとユージが近藤課長(故 中条静夫)を引き合いに出して今や上司の透に説教をする。ファンならここでウルっとくる。

引退したパパがおでん屋さんになっている。引退した中さんがラーメンの屋台を営んでいる。ファンならここでウルっとくる。

定年退職後は一緒にニュージーランドへ移住しようと約束していた恋人の夏海が殺され、泣き叫ぶタカ。”泣く”という感情をこんなにも露わにしているタカを見たのは初めて。ファンにとってはけっこう衝撃的なシーンだ。そばに佇むユージはなんと声をかけていいかわからない。タカに近寄って慰めてやることもできない。そんなユージの姿を見てウルっとくる。

単独で敵のアジトに潜入しようとするユージに、透が整備された車を手配する。それは、日産レパードのゴールドカラー。ドラマ開始当初、ユージがいつも乗っていたやつだ。ファンならここでウルっとくる。そして、ユージのことを止めつつも弾丸をプレゼントする透。もっかいウルっとくる。

ユージが腕を負傷し、ピンチの時、遠くからバイクのエンジン音が。「ショータイムだ」ユージがそう言うと、ショットガンを両手で構えながらバイクを走らせるタカの姿が。ファンならここでウルっとくる。

大勢の敵に囲まれ絶体絶命のタカとユージ。「昨日言いかけてたおまえの夢ってなんだよ?」タカがユージに訊く。ユージが答える。「結婚して子供作って、その子供をダンディなデカに育て上げる」これってユージからタカへの告白じゃないか。長年パートナーとしてずっと一緒にやってきたタカ。「やっぱり俺たちふたりでひとりだよ」過去には、自分の単独行動のせいで深手を負わせてしまい意識不明となったタカに、ユージは半泣きでそう言ったこともあった(劇場版 あぶない刑事)。ユージにとって、タカはかけがえのない相棒なのだ。定年退職を機に、タカは恋人と第二の人生を歩み始める。それを自分は笑顔で見送ってやろう。そして自分は、子供を作って、タカのようなダンディで懐の深い男に育ててみせよう。ユージはそう思っていたのだ。ファンならここでウルっとくる。タカが言う。「ユージ、おまえに出会えてよかったよ」一瞬の間。「泣かせないでよ」ユージがはにかみながら返す。ファンなら、いやファンでなくともウルっとくる。

男が男に惚れるドラマ。最高のバディムービー。そりゃ、ツッコミどころはいくつもあるが、今この時は、そういうものもすべて飲み込んだ上で、ただただ感慨に耽りたいのだ。

30年の歴史がある。キャラクターたちは、30年分の年輪を刻み、老いた者、成長した者、現役バリバリの者と、いろいろだが、皆いい歳の取り方をしている。『あぶない刑事』を知らない人は、ドラマシリーズと劇場版、膨大な量になるけれど、それらすべてを観てから本作に臨んでほしい。でも、この感慨は、30年間リアルタイムで観続けてきたからこそ味わえるものなのかもしれない。