クリード チャンプを継ぐ男

初め、グリード(GREED)と読み違えていた。貪欲にボクシング道を極めるスラム街出身の野良犬みたいな男が主人公だろうかと思っていた。ところがよく見てみたらクリードCREED)だった。

クリードってなんだろう?

ロッキーファンだったならすぐにピンときたはずだ。ロッキーのライバル、アポロの名字がクリードということは、映画が始まってからわかった。ロッキーシリーズは何となくの記憶しかなく、概要を思い出すので精一杯だ。

そんな自分でも、本作はブルブル震えるほど熱くなれた。

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貧困からの脱出、アメリカン・ドリーム、奇跡の大逆転が往年のロッキーのテーマだ。しかし今作は、生まれながらに宿命を背負った男が、自分の生きる道を見つけるためにボクシングに立ち向かうという、これまでとは毛並みの違う作品となっている。

まず、主人公が裕福。出自は不幸だが、育ちは恵まれている。ここがロッキーと大違い。そして、仕事のキャリアも順調で、一見順風満帆に見えるのだが、父親の幻影を追ってボクシングの世界に身を投じていく。

第2世代ならではの苦悩とでも言おうか、決してロッキーでは描けなかった世界がここにはある。アドニスのイマドキだけどひたむきな姿勢に、老ぼれロッキーの心が動かされ、時代と因縁を越えた師弟関係が生まれる。師匠と弟子のイチャイチャが本作の醍醐味と言っても過言ではない。

カッコよかったのが、アドニスの黒をベースとした普段着のファッションとビアンカの音楽だ。すごくセンスが良い。

パッドマンやカットマンは本物の人を出演させている。彼らの醸し出す本物の雰囲気が、ボクシングシーンにリアリティを与えている。カットマンのあの「指、トントン」は思わず声を出して感心した。その道何十年のプロフェッショナル達が、一人のボクサーを支えているというリアリティが、ラストの試合シーンをより一層熱いものにさせている。

第1世代から第2世代へ魂が受け継がれ、さらに第2世代がそこに新しい息吹をもたらし新たな伝説を築いていく。年始から熱い気持ちにさせてくれた映画だ。