ヴィジット ※ネタバレあり

ようやく出てきたシャマランらしい作品。

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訳あって家出をして以来、実家とはすっぱり連絡を絶ってしまったママを見かねて、ベッカとタイラーの姉弟がママの故郷メイソンビルへと向かう。インターネットでママを見つけた祖父母が孫に会いたいと連絡を取ってきたのだ。お互いに面識のない祖父母と孫たちは、一週間、一緒に時間を過ごすという計画を立てた。一方、ママはいまだにわだかまりが解決しておらず、ボーイフレンドと旅行に出かけてしまう。

表向きは初めて対面する祖父母との休暇だが、姉弟にはこの旅に別の目的があった。それは、祖父母とママを仲直りさせること。パパが家を出て行き、女手一つで自分たちを育ててくれているママは、いろんな悲しみを背負っている。そして、姉弟もパパに捨てられたというトラウマを克服できないでいる。その影響で、ベッカは鏡で自分の姿を見ることができない。タイラーは強迫性障害を抱えている。

この映画の素晴らしいところは、ただのスリラーで終わっていない点だ。先に書いた通り、旅の目的というのが裏テーマとしてきちんとあり、それをどう決着つけるのかというところまで描かれている。また、ベッカとタイラーが抱えているそれぞれの問題も、乗り越えなければならない問題を自らの力で克服し、最終的にどのように変化したかというのがラストでわかる作りになっている。このように、本作は子供の成長譚でもあるのだ

もちろん、スリラー本来の味である気味の悪さや恐怖感は抜群だ。なんといってもジジイとババアが怖い。そもそも昔話の時代から、ジジイとババアは恐ろしいものの代表格にある。そのジジイとババアが本領を発揮したら、そりゃあ悲鳴を上げるか絶句するかのどちらかでしょ。『マイ・インターン』では「年寄りカッコイイ」説を唱えたが、本作では「年寄り気味悪い」説を唱えたい

ところで、本作は姉弟が自分たちでドキュメンタリー映画を作るという設定のもとにPOV方式で撮影されているのだが、主人公と敵対する相手がカメラを持つという演出は新しく感じた。

それから、わからなかったのは、列車の車掌と祖父母がボランティアをしている病院のスタッフ。二人ともカメラを向けられると「以前、俳優を目指していたんだよね」と目をギラつかせる。この二人のシーンの意味を知りたい。なぜ、違う場面に出てくる別々のキャラクターに同じセリフを言わせたのか。特にストーリーに絡んでくるわけでもなく。いまのところ、謎。