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ムカデ人間3

ようやく観てきた『ムカデ人間3』。公開開始と同時に観に行く予定だったのだが、なんだかんだでズルズルと先延ばしになり、やっとやっとやっと観ることができた。

ムカデ人間』を観賞したのが4年前。たしか渋谷の映画館だった気がする。「つ・な・げ・て・み・た・い」という至ってシンプルで無邪気で狂気的な願望を実現させるハイター博士の人体実験に、観客一同、絶句と悲鳴を繰り返した。そのときはまだ、この映画がこんなにも人気が出るとは思いもしなかった。個人的には大絶賛だが、こんなカルト映画一般受けするわけがない。いくらネットの口コミでDVDスルーを免れたからといって、さすがに流行りはしないだろう。そう思っていた。

その翌年、これまた渋谷の映画館で『ムカデ人間2』を観賞した。映画『ムカデ人間』を観て「自分も、つ・な・げ・て・み・た・い……」とトチ狂った妄想を実行に移してしまう男、マーティンの、倫理的にも政治的にも道徳的にも200%アウトな行動を恐ろしくも悲しく、可笑しくも気味悪く描いていて、前作を上回る絶句と悲鳴を観客から引き出していた。中には途中で席を立ってしまう人もいた。それほどに激しい内容だったのは、マーティンの欲望200%が白黒プリントの映像に、これでもかと刻まれていたからだ。満場の客席は映画の内容とシンクロするように阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。鑑賞後の放心状態は今も忘れられない。

(まったくの余談だが、あの傑作映画『ザ・ウーマン』を観賞したのもこの時期と前後する。素晴らしい映画体験というのは突然訪れるものだ。これだから、映画館に通うことはやめられない。)



『1』をひとことで言い表すなら「情熱」。『2』は「覚醒」。では『3』は……?

「暴走」

そう、この映画、完全に突き抜けてイッちゃったのだ。

まず、主役のボス所長に『1』でハイター博士を演じたディーター・ラーザー、準主役の会計士ドワイトに『2』でマーティンを演じたローレンス・R・ハーヴェイを据えて、シリーズのファンには嬉しいキャスティングで悶絶させてもらう。さらにふたりの関係性や、ボス所長の分裂した人格、物語の舞台となる刑務所の名前、服役している様々な人種や宗派の囚人たち、エロ悲しい秘書、そしてボス所長が気付薬代わりに食べるあのブツ(ヒントは前項に)などなど、お腹いっぱいになる要素満載。

一方で、ムカデ人間そのものを前面に押し出してくる描写は最後までのお楽しみ。引き延ばして引き延ばして、最後にドーン、500人の数珠繋ぎ!

初めての衝撃という点では『1』に、猛烈な残酷描写という点では『2』に軍配が上がるが、壁を突き抜けて向こう側に到達したという点においては本作が快進撃を見せる。また、トム・シックス監督の政治的メッセージも色濃く映し出しているのがこの『ムカデ人間3』であることを最後に記しておきたい。

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追記
したまちコメディ映画祭in台東で本作が上映されていれば、爆笑必至だったに違いない。