Mr.タスク ※ネタバレあり

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キル・ビル・キッド(注1)の悲惨な映像を面白動画として紹介しているあたり、かなりゲスい。ここまでひどい映像を流しているかは知らないが、トークがゲスいアメリカのポッドキャストはいくつか聴いたことがある。ぼーっとしているときに垂れ流して聴いているとくだらなくて笑えるが、何の身にもならない。そこがいいのだが。

注1 キル・ビル・キッド
家のガレージで日本刀を振り回している姿を自撮りしているオタク少年。誤って自分の右足を切断してしまう。

それは置いておいて、このポッドキャスターの低俗で傲慢で出世欲むき出しのいけ好かない感じがリアルだ。ああいう奴はいる。恋人のアリーが「昔のあなたのほうが優しくていい人だった」となじるも、「俺は生まれ変わったんだ、そんなヤワなままじゃこの業界で生きていけない」と嘯くあたり、この主人公を嫌いになれない。

ポッドキャストの番組名も好きだ。その名も”NOT SEE PARTY”(ナッツィー・パーティ)で、アメリカ英語だと”NAZI PARTY”(ナツィ・パーティ)(注2)と似た発音に聞こえるのだ。あえてそれを狙って名付けているところも、主人公の性格を物語っている。

注2 ”NAZI PARTY”(ナツィ・パーティ)
言わずと知れたアドルフ・ヒトラー率いるナチ党。第二次世界大戦時に猛威を振るい、その傷跡は今なお残っている。

主人公の名前がウォレスというのも皮肉めいたネーミングだ。後にセイウチ人間となってしまう彼は、恋人や相棒からウォレス!と呼ばれているのかウォルラス!(注3)と呼ばれているのか、一瞬判断がつかなくなったのではなかろうか。観客としては、涙を流しながらウォレスと呼び続けるその視線の先に悲しそうな顔のウォルラスがいるというアイロニカルなシーンに恐怖を感じつつもついつい笑ってしまう。

注3 ウォルラス!
主人公の名前はWallace(ウォレス)、セイウチは英語でwalrus(ウォルラス)、ウォレスとウォルラスはこれまた似た響きに聞こえる。

この映画のもう一つの見所は、ギー・ラポワンテだ。ウォレスをセイウチ人間に変えてしまったハウ・ハワードとは別の意味で変人なそのキャラクターは、いったい誰が演じているのか気になっていて、エンドロールでクレジットを見たのだが、役名の隣にも「ギー・ラポワンテ」と書いてあり、「本人役?」とこれまた謎が深まる。

鑑賞後、いろいろ調べてみたらあの俳優が演じていたことがわかったが、本編も公式サイトもプログラムも、誰が演じたかは明らかにしていない。

あと、忘れちゃいけないのはハウ・ハワードの高笑い。あの気狂い老人のイカれた笑い声はベタだが秀逸だ。

本作は『ムカデ人間3』(注4)の前夜祭的なノリで観に行ったのだが、侮れないぞ、セイウチ人間。すでに公開は終了しているので、見逃した人はDVDで夜中に鑑賞するといい。

注4 『ムカデ人間3』
「Aの肛門とBの口をつなぎ、Bの肛門とCの口をつないで、ムカデ人間を作りたい!」という欲望に駆られたマッドサイエンティストが実際にいろいろやっちゃうのが『ムカデ人間』。その映画を観て、「真似してもっと大勢つなげちゃおう!」と狂気に走る薄気味悪い男が主人公なのが『ムカデ人間2』。そして現在『〜3』が絶賛公開中。発想と映像のグロさ加減は度を越している。