さよなら、人類 ※ネタバレあり

このタイトルってなんだろう?

『存在について考える枝にとまった鳩』という哲学的な原題をやわらかくしたような邦題だ。人間の存在から脱却するのか、人間という存在を諦めるのか。どこか悲観的でもあり、解脱の概念も含まれているような、そんなニュアンスをこの邦題から受け取った。

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博物館で山鳩の剥製を見つめる老人。生が死を見つめているのか、死が生を見つめているのか。

「元気そうで何より。元気そうで良かった」

寂しそうな、不幸せそうな、または死にそうな人たちが、一様にして電話口の相手にこう伝える。

「ロングセラーはこちらです」
「皆さんに楽しんで頂きたくて」

売れそうにない面白グッズを売り歩くセールスマンの2人組。怒りんぼと泣き虫の2人は、様々な人たちの人生の1シーン1カットを目撃しつつ、自分たちの人生に悲嘆する。

全部で39シーン39カット。1シーン1カットで、フィックスの長回し。絵画の中の人物たちが動いているように見える画作り。話の筋は何もないが、すべてのエピソードに共通しているのは、人は1人では生きられないということ。常に相手の存在を必要としている。だから、どんなに最低な今日も生きていけるし、明日にかすかな望みを繋げることができる。

「また水曜日か」

本作は、死にまつわるエピソードから始まるが、最終的には繰り返される日常にフォーカスをあてている。人生に絶望しつつも、どこか肯定的に受け取っている、そんな優しさが根底に流れている映画だ。