進撃の巨人 ATTACK ON TITAN

もともと原作が苦手だった。

話題のコミックという触れ込みで書店に平積みされていたので、当時発売されていた1〜3巻くらいまでまとめて買って読んだ。1ページ目から絵の下手さ加減に辟易しながらも、この世界観はきっと面白いことにつながるに違いないと期待を寄せつつ読み進めたが、「心臓を捧げろ!」というセリフのダサさにいい加減うんざりして本を閉じた。

それでも我慢して5巻か6巻くらいまでは読んだのだが、「そんなにイライラするのならもうやめたら?」と呆れ顔の妻に言われてその通りだと思い、全巻まとめて他の誰かに譲った。

そういう次第なので、今回の映画自体は特別興味があったわけではなく、樋口監督に期待していたわけでもないのだが、話題ものには一度は乗っかっておいたほうが後々面白いだろうからという理由で鑑賞した。



土曜日の夜の回。席が9割程度埋まった時間に中年女性と6歳くらいの男の子が入ってきた。

親子だ。

妻とふたりで来ていたのだが、ちょうど自分の左隣にひと席、さらにその真後ろにひと席空いていた。親子は、隣同士のチケットが取れなかったようで、そこに前後して座るらしい。母親が息子にどっちに座るか聞いて、結局母親が前、息子が後ろに座った。

予告編の間、息子は母親に「怖くない?」「だいじょうぶ?」と後ろから囁きかけていた。本当は自分が大丈夫じゃないくせに。くりくり坊主のその子の様子が可愛らしくて、ずっと気になっていた。

上映中のマナーについて注意を促す映像が流れ始めると、いよいよ本編スタートである。

妻の右隣の端っこ二席がいまだに空いている。もう誰も来ないんじゃないだろうか。そう思って妻に言った。「親子ふたりで並んで座れるようにずれてあげようか」

賛成した妻はさっそく右に一つずれた。

左に座っている母親に声をかける。「むこうの席誰も来ないみたいなんで、この席空けますから、息子さんをここに座らせてあげてください」

それから母親と一緒に後ろを振り向いて息子くんに手招きした。呼ばれてやってきた息子くんは母親と一緒にお礼を言ってきた。

いよいよ真っ暗になって本編が開始した。するとまた息子くんがこちらを向いて「ありがとうございます」と頭を下げてきた。くりくり坊主が可愛くてしかたない。

「いいんだよ。楽しんでね」

上映開始数分後にチャラ男二人組が入ってきた。そして妻の座っている席とチケットに書かれている番号を見比べていた。「やばい、来ちゃった。後ろに行くね」そう言って妻はもともと息子くんが座っていた席にサササッと移動して行った。

本編は開始早々巨人が現れて本能の赴くままに人を喰うシーンがグロテスクに描かれていた。あまりにも気色の悪い映像と音だったので、6歳の子どもには不向きな映画だと心配し、左のほうばかり気にしていた。

案の定、息子くんは母親に「だいじょうぶ?」と聞いている。おまえが大丈夫じゃないんだろうが。

母親も身を乗り出してみたり、ビニール袋をガサゴソやって炭酸飲料を出して飲んでみたり、それを息子に飲ませたり落ち着かない様子だ。

ついに息子くんの「だいじょうぶ?」確認がピークを迎えた。母親に「気持ち悪いの?」と聞かれて正直に「うん」と答える彼。「もうすぐ終わるから平気よ」と開始15分なのに嘘をつく母親。

最初の人喰いシーンは終わっていたが、息子くんはやはり無理だったようで、映画のプロローグパートが終わってすぐ親子は劇場を出て行ってしまった。

左隣に席が二つ、ポカンと空いた。

R指定をするべきだと強く思った。

それから母親のほうも無理やり別々の席でチケットを取らずとも一緒に座れる回に予定を振り替えなよ、とも思った。



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本作については、石原さとみの「くぉんなの、はぁじめてぇぇ〜!!」意外に特筆すべきことはない。ここですべてが完璧に崩壊する。(加えて言うなら、水崎綾女のケツショットも別次元の見所。)

演出のバランスの悪さ、演技指導のマズさ、カメラワークの気持ち悪さ、脚本の稚拙さ、音楽のおしつけがましさ、監督の品の無さが如実に表れている映画だ。

その悪い部分が顕著に表れているのが、アルミンとサシャの夕食シーンである。スマッシュポテトを使って作戦を説明するアルミンと、ポテトを無作法に口に詰め込むサシャ。

ポテト女と巨人は同類である。

特撮に関して言えば、◯◯レンジャーや◯◯マンやライダーなどの特撮戦隊モノの域を越えない。いや寧ろ、そっち系を狙ったのではないか。人が巨人を演じてミニチュアを壊すあたり、ゴジラガメラに想いを馳せているのがわかる。(最後のタイトルバックのフォントでも連想させられる。)

まあ、エンドロールに至るまで悪い意味で気色の悪い映画だった。